家族の肖像

さだまさし( 佐田雅志 ) 家族の肖像歌詞
1.春

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

またひとつ恋が生まれたよ
泣きたくなるほど いい子だよ
今度こそは 本当に
しあわせに してやれると 思う
新宿発 あいつの町ゆき
今夜の夜行バスで ゆくつもり
今までいくつも 恋を迷って来たから
少しはきちんと 愛せると思う
ビルの谷間で 狭い空を仰げば
折から朧に 上弦の月
北へ帰る 鳥が鳴いてゆく
缶ビール片手に 地図もない 俺の春

新宿発 あいつの町ゆき
最終バスに今 乗ったところ
どんな顔で 笑ったらいいだろうか
どんなふうに 抱きしめたらいいだろうか
三寒四温の 花冷えの旅立ちか
お似合いじゃないか もう迷わない
どこからか桜 降りしきる風の色
桜・桜咲くか 地図もない 俺の春

またひとつ恋が生まれたよ
泣きたくなるほど いい子だよ
今度こそは 本当に
しあわせに してやれると 思う


2.ハックルベリーの友達

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

Huckleberry Friends Forever
Huckleberry Friends Forever

ばったり街角で 出っくわした時に
がっかりしたんだよ 君の目が曇ってた
あんなにキラキラと 輝いてたのに
大人になったと 言い訳はいらない

ちょっと待って いつだって僕ら Huckleberry Friends
忘れないで 子供の頃の夢を
きっと いつだって僕ら Huckleberry Friends
指切りしたじゃないか

Huckleberry Friends Forever
Huckleberry Friends Forever

すっかり疲れたら こっちへお帰りよ
そんなに世の中を つらく思わず
もっとときめきなよ ずっと君らしいよ
死ぬまで子供の 心を守ろう

ちょっと聞いて いつだって僕ら Huckleberry Friends
冒険旅行へと出かけようよ
そうさ いつだって僕ら Huckleberry Friends
元気はいつも味方さ

ちょっと待って いつだって僕ら Huckleberry Friends
忘れないで 子供の頃の夢を
きっと いつだって僕ら Huckleberry Friends
指切りしたじゃないか

Huckleberry Friends Forever
Huckleberry Friends Forever


3.ヨシムラ

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

怖いものなしで生きて来たと思ってた弟が
酒に酔った勢いで告白したことがある
実は子供の頃のこと 同じ町内に住んでいた
ヨシムラって奴が かなり怖かったということを

ヨシムラは確か僕より二つほど年上で
駄菓子屋の大人しい息子で 決していじめっこではなく
僕はふとむしろ逆に 弟が彼に怪我をさせた騒ぎと
ひたすら謝るおふくろの背中を思い出していた

懐かしきかな少年時代の 脇役たち
懐かしきかなワンパク時代の仇役たちよ

お袋はまだ若く 声も大きく手も早く
叩かれて泣きべそをかいていた弟も
みんな無邪気だった あの頃

実はそのあと故郷へ帰る仕事があったので
本当に久し振りにあの町を訪ねてみた
学校沿いの細い道は更に狭くなってそこにあり
ヨシムラの駄菓子屋も相変わらずそこにあった

何気なく電話をするふりで中を覗いたら
すっかりおっさんになったヨシムラがそこに座っていたが
タバコをひとつ買ったら無愛想に釣りをくれた
ヨシムラ少年は 僕を覚えていなかった

懐かしきかな少年時代のときめきよ
懐かしきかなワンパク時代のきらめきたちよ

原っぱも土管もいじめっこも今はなく
思い出だけが少しも歳をとらずに
袋小路に うずくまっていた


4.神様のくれた5分

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

地下鉄の駅を出た処で 懐しい制服に出会ったわ
あなたの選んだ待ち合わせ場所は 私の学校の近くだった
眩しすぎる初夏の日射しに 立ちのぼる陽炎の向うから
あの日の私が横断歩道を ゆっくりと渡って来る
いくつもの初恋を過ごして
教科書にない恋も学んで
いつも青空を背負っていた私が
傘の差しかたもいつの間にか憶えて
ああ あの頃好きだった人は
いつかイニシャルの向う側に去り
アイスティ越しにあなたを待っている
神様のくれた5分

散水車が町を濡らしてく お店に流れるのはサティ
白い野球部のユニフォーム達が 思い出を横切ってゆく
いくつもの記念日を刻んで
あなたには内緒の日もある
笑顔を作るのが上手な私が
今は泣き顔を演じられる しあわせ
ああ あの頃悲しかったことも
あなたのポロシャツの向う側に去り
アイスティ越しにあなたを待っている
神様のくれた5分


5.猫に鈴

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

そんな笑顔で 僕を見ないで
これ以上夢中にさせてどうするの
知ってるつもり 君は遠い人
友達で かまわないと言いきかせて 来たけれど

仲間の噂じゃ君は 誰にもつかまらないって
抱きしめたつもりでいても もう何処かにいるらしい
(テレポーテーション テレポーテーション)
描の首に鈴をつける そんな感じでみんな
おそるおそる君のこと 様子をうかがっている
(フラストレーション フラストレーション)
いつでもスキなど見せない でもお高い訳じゃない
途方に暮れてたある日 君から声かけられた
「今度ゆっくり 会いたいわ」
さすがに耳を疑ったさ 何がおきたのかと
ストップモーション

いつもの笑顔で君は 僕をじっと見つめて
あなたの噂教えるわと いきなりきり出した
(イントロダクション イントロダクション)
誰にもつかまらないって みんなが言ってるわ
あんな笑顔で私を 見つめるのは何故なの
(インスピレーション インスピレーション)
いつでもスキなど見せない でもお高い訳じゃない
途方に暮れたの私 だから実は今日
「猫に鈴を つけに来たのよ」
さすがに耳を疑ったさ それじゃあべこべだ
ストップモーション

そんな笑顔で 僕を見つめて
これ以上夢中にさせてどうするの
知ってるつもり 二匹の猫は
時々は爪をたてたりするけれど そばに居る
いつでも そばに居る


6.October ~リリー・カサブランカ~

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

今日 君の誕生日 ふと思い出した
元気でいますか しあわせですか
君と二人きりで 祝ったあの日
しあわせなのが 切なかった
君を傷つけても 君が欲しかった
リリー・カサブランカの 儚く白い風が
部屋を包んでいた
10月 午后の陽射し 愛はたおやかに
時計廻りに過ぎて
もう 気が違う程に
違ざかったその風景は色褪せない

今日 君の誕生日 今頃誰と
祝っていますか しあわせですか
別れの言葉さえも 君に言わせた
リリー・カサブランカの 花の香り淡く
君の髪を 梳かした
今でも愛している 苦しい程
想う夜更けもあるけれど
君のしあわせ 祈っている
そう言ったら きれいごとだろうか

10月 午后の陽射し 愛はたおやかに
時針廻りに過ぎて
もう 気が違う程に
遠ざかったその風景は色褪せない


7.秋の虹

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

まるめろの花の咲く頃に
お前は生まれて来たのです
母さんが嫁いで 2年目の春でした

幼い頃から大人しく
やさしい娘でありました
母さんが嫁いだ 歳を越えたなんて

こうして目を閉じて 思い起こせば
憶えたてのカタコトで 母さん呼んだお前を

嫁がせる朝 こんなことを
母は思い出しています

まるめろの実が実る頃
お前は嫁いでゆくのです
色深めるななかまど すてきな朝です

しあわせは形でなくて
いつも心にあるのだと
言いかけてふと空に 虹を見つけました

そういえば私が 嫁いだ朝にも
母はやはり 庭に出て 花を見ていた

どうかお前が いつまでも
しあわせでありますように


8.戦友会

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

櫛の歯が欠けるように 仲間が減ってゆく
戦友会に出掛けた夜 おやじが呟いた
学舎でなく古の戦の友が集う
年に一度の 思えばなんて儚い祭りだろう
誰もがいつか 年老いてゆくけれど
何とも俺達の風情は
他人に玉手箱 開けられてしまった
青春の浦島たちのようだ
生命懸けておまえ達を 守ったと言わせてやれ
それを正義と言うつもりはないが 時代と片付けたくもない

今の青春を羨ましくなくもないが 替わろうかと言われても断るだろう
不幸な時代の若者たちはそれでも青春を確かに見たのだ
銃弾に倒れた友の顔を 忘れることなど出来ない
あいつの分もあいつの分もと 生きる思いは解るまい
いつかは消えゆく 集いなのだ
冬の名残の雪なのだ
そして必ず 二度と必ず
降ってはならない雪なのだ
穏やかにそう言った後 息子の僕をサカナに
珍しくおやじは家で酒を呑んで その日は早くつぶれた

雪が降る今日もどこかで 誰かが凍えてる
遠くでバイクの走り去る 青春が聞こえた


9.秘恋

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

形見分けで貰った 祖母の机に
古ぼけた写真と 封筒が眠っていた
祖父でないそのひとは 若い兵士で
出しそびれた恋文の 宛名の主だろう
昔 愛した ひとだろうか
せつなく別れた ひとだろうか
ユキノシタの白い花を祖母は愛していた
石垣にすがるように 耐えるように咲く花を

時代とはいえども 祖母の秘めた恋は
誰に語る事もなく 静かに閉じていた
どんな風に祖母を 愛したひとだろうか
そのひとの面影は 少し僕に似ていた
どんな思いで諦めたのだろう
どんなに悲しく想い続けたのだろう
ユキノシタの白い花を祖母は愛していた
石垣にすがるように 耐えるように咲く花を

今は昔の物語
人知れず咲いて 消えた花
ユキノシタの白い花を祖母は愛していた
石垣にすがるように 耐えるように咲く花を


10.奇跡~大きな愛のように~

作詞:さだまさし
作曲:さだまさし

どんなにせつなくても 必ず明日は来る
ながいながい坂道のぼるのは あなた独りじゃない

僕は神様でないから 本当の愛は多分知らない
けれどあなたを想う心なら 神様に負けない
たった一度の人生に あなたとめぐりあえたこと
偶然を 装いながら奇跡は いつも近くに居る

ああ大きな愛になりたい あなたを守ってあげたい
あなたは気付かなくても いつでも隣を歩いていたい

どんなにせつなくても 必ず明日は来る
ながいながい坂道のぼるのは あなた独りじゃない

今日と未来の間に 流れる河を夢と言うなら
あなたと同じ夢を見ることが 出来たならそれでいい
僕は神様でないから 奇跡を創ることは出来ない
けれどあなたを想う奇跡なら 神様に負けない

ああ大きな愛になりたい あなたを守ってあげたい
あなたは気付かなくても いつでも隣を歩いていたい
ああ大きな夢になりたい あなたを包んであげたい
あなたの笑顔を守る為に多分僕は生まれて来た

どんなにせつなくても 必ず明日は来る
ながいながい坂道のぼるのは あなた独りじゃない